乙女になりたい人生だった

乙女ゲームとシチュCDと、ときどき小説漫画などの備忘録

『女王さまの夜食カフェ─マカン・マラン ふたたび』読了感想

くったくたに煮込まれたお野菜が食べたくなりました。

別にそんなお料理は作中には出てこないのですが。でもほっこりした煮込み料理のイメージなんですこのシリーズ。

 

www.chuko.co.jp

『女王さまの夜食カフェ─マカン・マラン ふたたび』を読みました。「ふたたび」とついてる通り「マカン・マラン」シリーズの2作目になります。1作目は1年半くらい前に読んでいて、結構ずっと続き読みたかったんですけどこのシリーズなぜか文庫化されないので本屋で手にとっては棚に戻すことを繰り返していました…。今回一念発起して全巻購入したので順次読んでいきたい。

あらすじ

ドラァグクイーンのシャールが営む、深夜だけ開くカフェ「マカン・マラン」。そこには様々な悩みを持つ人が訪れる。シャールは彼らに「夜食」を振舞う。

これがシリーズ通してのあらすじになります。

2巻には

「つまらない自分」に悩む派遣社員と「蒸しケーキのトライフル」

人生の岐路に立たされた漫画家アシスタントと「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」

「母」を頑張る専業主婦と「秋の夜長のトルコライス

「親子」に悩むシャールと旧友、柳田の「冬至の七種うどん」

の四編が収録されています。

感想

蒸しケーキのトライフル

派遣社員、真奈が年齢は近いながらも自分とはまるで違うタイプの悩みを持っていたので異文化交流みたいな気持ちになりながら読んでしまった。真奈は「擬態」ばかり上手くなって自分がないことに悩んでいたけど、私は長らく周りに上手く合わせられないにとに悩んでいたので。「つまらない自分」に悩む人に「つまらないもの」の意味を持つトライフルを出して「(会話が弾むんだから)それで充分」「つまらないとか言っちゃ駄目」と諭すシャールさんが素敵。自分まで励まされた気分になる。あとジャダが可愛い。

梅雨の晴れ間の竜田揚げ

初っ端から漫画アシスタント裕紀の境遇がしんどい。逃げられたと思ってたしがらみに囚われてしまうのも、家業も家族も嫌いではないから余計に辛いのかなと。梅雨の情景と相まってこっちの気分まで暗くなるようなお悩みパートでした。
自分の夢を追いかける選択をするものの、母親に裏切り者扱いされてしまう結末も辛い。母親としても長男亡くしてただでさえ悲しいのに帰ってきてくれた次男にはそりの合わない長男の嫁の味方をされてしまったわけで、裏切られたと感じるのも無理は無いのが余計に辛い。
それはそうとソイミートの竜田揚げ美味しそうで気になりました。普通のとはまた違うお味がしそう。

秋の夜長のトルコライス

「生きてくのって、寂しいのよ」の言葉が刺さりすぎて思わず泣きました。親子だろうが夫婦だろうが他人のことをすべて理解するのは不可能な以上、寂しさを抱えて生きていくしかない。だから他人に優しくするのかもしれない。なシャールさん素敵(二回目)
最後のホットケーキを作っているシーンで焼きあがったケーキをお互いの前に差し出しているのが些細なことだけど印象的でした。想像するだけで暖かい気持ちになれる情景かなと。

冬至の七種うどん

冬のななくさなる物が存在しているのは知っていたのですが「七草」ではなく「七種」なのは初めて知りました。南瓜って草じゃないよな…とは思ってたんですが種だったとは。勉強になる~。七種うどん普通に美味しそうなのでとても食べたい。今冬じゃないけど。
シャールって他の人の視点だと「女王さま」「魔女」とも形容されている通り、ちょっと人智を超えているというか、隙なしの存在に見えている感じですが、柳田にとっては中学時代の同級生から地続きの、地に足ついた存在なんだなということが良く分かるのがこの話の好きなところです。

 

まとめ

1巻と変わらず、心に沁みる癒しになってくれる小説だなと感じました。ここしばらく積ゲーも積読も崩したいのになにやっても集中が続かなくて焦っていたのでいい小休止になりました。
疲れてるときでもするする読みやすい、良い小説ですので暖かい気分になりたいときにぜひ!私は3巻に突撃します。